死別後の悲しみ 辛い症状 悲嘆ケア

 

・具体的な事例は
死別の苦しみ 相談事例をご覧ください。

 

このページをご覧になっておられる方は現在、言葉では表現できないような悲しみの中にいるのかもしれません。

 

 

このページでは、今あなたが感じている悲しみや苦しみをどのように緩和していくのかを述べていきます。

 

悲しい時には悲しんでもいい

家族や友人を亡くしてしまうことの辛さは言葉には言い表せないほどのものがあります。

 

でもこんな時だからこそ、人は逆に頑張ってしまいがちです

 

「いつまでもくよくよしていても仕方がない。早く忘れてしまおう」

 

「遺された子供たちのためにも、しっかりしなければ」

 

また、ご自分を責めてしまう方もおられます。

 

「いつまでも忘れられない自分は情けない」

 

「心身の調子がよくない。自分がダメになってしまったのではないか?」

 

「生前にもっといろいろな事をしてあげたかった」

 

大切な人亡くしてしまうと様々な感情が出てくるものですが、「辛い気持ち」をなかなか人に話せないまま日々を頑張られている方多いのではないでしょうか?

 

このページをご覧になっておられる方の中にも「弱音を吐いてはいけない。早く元気にならなければ」とお考えの方もおられるかもしれません。

 

でもこのような時に「悲しい気持ち」を我慢しようとしたり、無理に元気を装ったりするよりは「悲しみ」や「苦しみ」といった感情を素直に認めてしまったほうがよいのです。

 

 

 

「すぐに元気を取り戻してポジティブに生きる」とか、「悲しい気持ちをゼロにしてすべてを忘れてしまいたい」ということは、死別の体験直後には難しいと思います。

 

そうではなく「悲しみを抱えつつも日常生活を過ごし、年単位の時間をかけながら元気を取り戻す」という考え方のほうが実際的だと思います。

 

(酷なことを書いているようで心苦しく思います。)

 

 

立ち直るにはどれくらいの時間が必要なのですか?

 

「もう永遠に悲しみから抜けられないのではないか」と感じられるかもしれませんが、そんなことはありません。

 

だいたい1年くらいたてば苦しい気持も落ち着いてきます。

 

「長すぎる」と感じられらた方も多いと思います。

 

亡くなった方はやはりあなたにとって本当に大切な人だったのです。

忘れられないということはそれだけご縁が深かったということでもあります。

 

なかなか立ち直れなかったりしてもそれは自然で無理のないことです。

 

今の苦しい気持ちも日がたつにつれ、落ち着いてきます。

 

それは故人のことを忘れてしまう、ということではなく、故人の記憶とうまく共存できる感じといえばいいでしょうか。

 

亡くなった方のことを思い出しても、感情が乱されることがない、穏やかに思い起こすことができる感覚といってもいいと思います。

 

しかし、1年後には元気になれるとしても、今が非常に苦しい状態であるのは間違いありません。

 

問題は今の苦しい気持ちを緩和し、どのように苦しい時期をしのいでいくかだと思います。

 

悲しく 苦しい気持ちをどうすればよいのでしょうか?

 

いくつかの方法を書いていきます

 

辛い気持ちを言葉にしてみる 話を聞いてもらう

 

苦しい気持ちを緩和するには、おそらく一番効果がある方法です。

 

どんなに「忘れよう」「前向きでいよう」と思っていても、今はどうしても故人のことが思い出されてしまう時期です。

 

そのような時は「考えないようにしよう」とするより、「故人の思い出」や「辛い気持ち」をたくさん語ってみることです。

 

悲しみはは安心できる場所で言葉にして語られることにより緩和していくことができます。

 

信頼できる家族、友人などにご自身の気持ちを語ってみましょう。

 

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今は他力を借りるときです。

 

人の力をどんどん借りましょう。

 

カウンセラーの利用もおすすめです。カウンセラーは「聴く」ことのプロであり、あなたの気持ちをしっかりと受け取めます

 

日記をつける

 

話をすることが苦手な方は、ご自身の気持ちを文章に書き出して形にしてみましょう。

 

ノートを一冊買ってきて、それに「悲しい」「苦しい」気持ちを書き綴るのです。

 

整った文章でなくともよく、ひとこと、ふたことでもかまいません。書くことで気持ちが落ち着くことは多いです。

 

 

しっかりと喪に服する

 

初七日や四十九日、一年忌など、お弔いの日にしっかりと故人のことを思い出し、この日は親戚や家族の人と過ごしましょう。

 

その日はお墓詣りをして、家族や親類と故人の話をし、しっかりとお弔いをしてください。

 

こうした節目をひとつ超えることで、なにかほっとして安心できるものがあると思います。

 

 

また自分なりのお弔いの時間を作ることもいいと思います。

 

・晩ごはんの前にお祈りを捧げる。

 

・月命日にお墓詣りに行く

 

ご自身にとって、やりやすい時間と日程で考えていただければいいと思います。

 

 

事例

 

彼は妻を亡くしたあと、2週間に1回、奥さんの墓参りに行っておりました。住居とお墓が近かったのです。「お墓に行くとなんとなく落ち着いてくる」との事でした。

 

ただ、1年くらいたったころでしょうか、彼はぱったりと墓参りをやめてしまいました。

 

何故かと聞いてみたところこんな答えが返ってきました

 

「自分なりに整理がついたというか、割り切れたというか。」

 

彼が奥さんのことを忘れたわけではないでしょうが、今は元気にくらしています。

 

 

できるだけ休憩をとる

 

大切な方との死別の体験は、人生における重大な危機です。

 

死別の体験は大きなショック体験であり、ご自身で思う以上に大きなダメージを心身に与えることがあります。

 

普段以上に疲労が溜まりやすい時期です。

 

できる限り、日々のスケジュールにゆとりをもたせ、休日は体を休める工夫をしたほうがよいでしょう。

 

また、この時期の転職や引っ越しなど、いわゆるライフイベントは大きな負担になることがあります。

 

結婚や就職は別として、そのほかの「大きな決断がいる人生のイベント」はこの時期避けたほうが無難でしょう。

 

 

注意したほうが良いケース

 

これまで述べてきたように、死別の悲しさと苦しさは時間の経過につれて、緩和されていきます。

 

ただ、中にはカウンセラーなどの力を借りながら乗り越えていくことが望ましい事例もありますのでいくつかご紹介します。

 

様々な感情が苦しく、葛藤が激しいケース

 

 

大切な人を亡くしたとき、人が感じる感情は「悲しみ」だけではありません。

 

実に様々な感情を複数、しかも同時に感じるのです。

 

そのなかに「安堵感」であるとか「怒り」であるとか、このような場面ではネガティブと言われる感情を経験することもあるのですが、こうしたネガティブな感情を感じてしまうことに苦しむ方もおられます。

 

たとえば

 

 

(亡くなられた方の介護中に)「早く死ねばいいと思っていた」

 

「亡くなる前にもっと大事にしてあれば良かった」

 

「人生の最後の時をもっと充実して過ごさせてあげたかった。」

 

「自分をおきざりにしていってしまった故人に怒りを感じる」

 

「故人の親類に傷つくことを言われてしまった。許しがたい怒りを感じる」

 

また次のような葛藤に苦しむ方もおられます。

 

 

「亡くなった方を弔いたい、しかし弔いたくない」

 

「気丈にふるまいたい、しかし泣きたい」

 

「亡くなった原因を知りたい  しかし知りたくない」

 

「早く元気になりたい しかし元気になりたくない」

 

「思いだしたくない  しかし忘れてはいけない」

 

 

こうした感情や葛藤があまりにも苦しい場合はカウンセラーを利用してもよいでしょう。

 

 

罪悪感が強く働いているケース

 

亡くなられた方が、事故や自死などで突然亡くなられた場合などの時、「罪悪感」が非常に強く働くことがあります。

 

 

 

「あの時、あんなことを言わなければ、故人は今でも元気に過ごしていた」

 

「あのとき、自分が注意していれば、あんな事故に巻き込まれずにすんだ。(病気にならずにすんだ)」

 

「自分という存在がありながら、あの人は逝ってしまった。自分は引き留めるだけの存在ではなかった。」

 

 

客観的に事実関係を整理していくと、不可抗力であったり、それぞれの方が適切な行動をしていることがほとんどなのですが、どうしても「罪の意識」は非常に強く感じられてしまうものです。

 

こういった罪の意識は語られることなく胸の中にためこんでしまうと知らず知らずのうちに肥大化してしまうことがあります。

 

肥大化されてしまった罪の意識は大きな心の影となり、「悲しみからの回復」を妨げてしまうのです。

 

しかし、罪の意識や、怒りや苦しみなどの辛い感情は、安全な場所で語り、それを受け止めてもらうことで緩和されていきます。

 

罪悪感を緩める方法は、罪の意識を言葉にして語ってみることに尽きるのです。罪の意識があまりにも苦しい方はカウンセラーにご相談ください

 

 

不眠や食欲不振がひと月以上続いている場合

 

大切な方を亡くしてしまったとき、不眠や食欲不振など「うつ状態」に似た心身の症状が出てくることがあります。

 

多くの場合、無理をせず心身を休めていれば自然に回復してきます。

 

ただし、一か月近くなっても不眠などの心身の不調が続いる場合はほうっておくべきではありません。

 

すみやかに医療機関を受診してください。

 

 

この時期に仕事やトラブルなどで疲労を溜めてしまうと、不眠症状や疲労感が固定されてしまい、うつ状態になることがあります。

 

最後に

 

死別の苦しみは当事者でなければ理解できないものです。

 

やはり、様々な葛藤や感情を整理し、穏やかなものにしていくには時間がかかります。

 

そう、死別の悲しみは「乗り越えたり」するものではなく、長い時間をかけて馴化していくものかもしれません。

 

それはやはり、亡くなられた方があなたにとって大切な方だったからであり、ご縁が深かったからだと思います。

 

 

しかし、確かに時間はかかりますが、必ず元気になれる日は来ます。

 

今は実感がわかないかもしれませんが、また笑顔になれる日はやってきます。

 

その日を信じて、毎日をゆっくりと、そして大切に送っていきましょう。

 

 

あまりにも気持ちが苦しい場合、カウンセラーの利用も有効です。

 

安心できる相手に、辛い気持を語っていると、苦しみが大きく減少することがあります。

 

ぜひ当相談室をご利用ください。

 

こころの相談室  りんどう  担当カウンセラー 馬場健一

 

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関連ページ

 

今の辛い状態の回復のプロセスは 死別の辛さ 心身の反応と回復のプロセスを参照してください。

 

 

具体的な事例に関心がある方は死別体験の辛い症状 事例と解説を参照してください。

 

 

大切な方を自死により亡くされた方は自死遺族の方へのカウンセリングをご参照ください。

 

 

うつ状態についての解説はうつ病の症状と原因のページを参照してください。

 

 

参考文献

 

対人関係療法でなおす トラウマ・PTSD  水島広子 創元社

 

愛する人を失うとどうして死にたくなるのか  下園壮太 文芸社