事件・事故の後のトラウマ症状(ASD)
交通事故を目撃してしまったり・・・
事故や事件に巻き込まれてしまったり・・・・
大切な人が突然亡くなってしまったり・・・・
このように大きなショック体験をしてしまうと心身に大きな負担がかかり、心と体に特有の症状が出てくる時があります。
このページでは、今の苦しい症状や気持ちがなぜ起こってくるのか?どのように回復していくのかをお伝えしていきます。
具体的な事例はトラウマ症例と解説をご覧ください
どのような症状がでてくるのでしょうか?
悲惨な事件や事故を目撃したり、実際に経験したあとの症状は下記のようなものです。
●身体面の症状
不眠が続く (一晩で何回も目が醒める。)
悪夢を見る 少しのことで驚く
イライラする。他人に対して攻撃的になる。
動悸がする
頭痛がする 耳鳴りがする 下痢が続く
食欲不振
ある時刻や場所(事故がおきた場所など)が怖い
事故現場にどうしても行けない 近づけない。
フラッシュバックがおこる
いつも考えている
事故のことが頭から離れない
普段では考えられないほど、イライラしてしまったり、ザワザワと落ち着かなかったり、フラッシュバックを体験したり、様々な異変を感じることがあります。
(これらの症状は専門用語で「過覚醒」や「侵入」と言われるものです)
●感情面の症状
「自分も悪かったのではないか 」という罪悪感に苦しむ
自分には何もできなかったという無力感に苦しむ。
イライラして人に当たる 投げやりになる・どうでもいい感じがしてくる
自分が自分でない気がする 自分が壊れたような気がする
もう回復しないと思う。
以上の症状は悲惨な事故のあとに非常に多くの方にみられるものです。あなただけが特別に弱いとか、「壊れていしまった」というわけではありません。
また、今まで説明してきた症状とは逆の形で症状が出てくる場合もあります。
悲惨なできごとのあと、感情が麻痺したようになり、悲しみを感じなくなったりしてしまう症状です。
(専門用語で麻痺といわれるものです)
「麻痺」の身体の症状
・ぼうっとしてしまう
・自分を外から見ている感じがする
・現実感覚がない
・事故や事件のこと自体忘れてしまう。記憶にない。
これらの症状も悲惨なできごとのあとに非常によく見られる反応です。
次章ではこれらの症状がなぜ起こってくるのかを解説していきます。
これらの症状がすべてでてくるということではありません。今、出ていない症状があっても大丈夫です。今後新たなショック症状がでてくるということではありません。
またショックに対する耐性は個人差が大きく、できごとを経験していても症状が出る人と出ない人がいます。
危険に対するセンサーが過剰に反応している
なぜこのような症状がでてくるのでしょうか?
人間は危険に対するセンサーを生まれながらにして持っています。
ガス漏れや水漏れなどの危険をブザーなどで知らせてくれるセンサーがありますね。
人間も「命にかかわる危険」を察知する「危険に対するセンサー」を体の中に持っています。
人間は危険を感じると「あらゆるものを見落とさないように」 「どんな音も聞き落とさないように」無意識のうちに全身の神経が緊張状態になります。この状態が「危険のセンサーがONになっている状態と考えてください。
ガス漏れセンサーならブザーの音で危険を知らせてくれますが、ブザーのかわりに全身に緊張感を持たせることで危険を知らせる仕組みになっているのです。
たとえば街灯のない暗い夜道を一人で歩いてみることを考えてください。その時は自然と体中に力が入り、全身の神経が研ぎ澄まされたようになりますね。「危険に対するセンサー」のスイッチがONになっている状況です。
もうひとつ例をあげます。道を歩いていて急に背中をバン!と叩かれたとしましょう。その時は心臓がバクバクしたり、呼吸が荒くなりますね。この状態も「危険に対するセンサー」のスイッチがONになっている状況です。
危険な状態が去ったことがわかれば,通常は危険のセンサーはすぐにOFFになります。
しかし、受けたショックが大きすぎると、この「危険のセンサー」が「ONになりっぱなし」になることがあります。
センサーがONになり、「危険に対処するできるように、常に緊張感を持続するように」体に信号を送っている状態なら、「眠れなかったり、イライラしたり」という症状がでてきます。
過覚醒のケースです。
センサーがONになり「怖さや悲しみを感じないように」体に信号を送っている状態なら、「感情がなくなったように感じたり、ぼうっとしてしまったり」という症状が出てくるのです。
麻痺のケースです
眠れなかったり、緊張感がとれなかったり、ぼうっとしてしまったり・・・・上に例としてあげた症状がでてくるのはそのためです。
悲しく悲しくて辛すぎるとき、体は「悲しみを感じる感情」を強引に遮断して悲しみを感じなくさせ、あなたを守ろうとしているのです。
ただし、このままの状態が永遠に続くということはありませんし、あなたが壊れてしまったということでもありません。だいたい一か月もすれば症状は軽快し、だんだん落ち着いていきます。
あなたの体の中のセンサーが働いているだけですから、どうかご安心ください。
この時期をどのように乗り越えたらよいのでしょうか
自然に治まってくる症状であるとはいえ、辛い症状や気持ちが続いているのは事実だと思います。
どのように辛い症状や気持ちをやわらげていくのでしょうか?
いくつか方法があります。この中から自分に向いていそうなものを選んでみてください。
話を聞いてもらう。
「誰かに聴いてもらえた」「辛さをわかってもらえた」というのはやはり大きな癒しになります。
カウンセラーの利用がお薦めです。
日記をつける。
自分の気持ちを文章にしてみると思いのほか気持ちが落ち着くことがあります。書き殴りであったり、形式が整ってなくてもかまいません。自分だけの日記をつけてみましょう。
軽めの運動をする。
身体を動かすことが好きな方や、得意なスポーツがあるかたは是非ためしてみてください。運動が苦手な方は散歩したり体操したりするだけでも違います。
激しすぎて疲労感を増大させてしまうものはおすすめできません。
リラクゼーションの技法をうまく活用する
呼吸法、EFTなど、さまざまなリラクゼーションのための技法があります。詳しくはカウンセラーにおたずねください。
また、回復には人それぞれのペースがあり個人差があります。自分のペースを守るということが非常に大切です。
どうしても眠れない、体の症状が辛いというかたは医療の力を借りるのもひとつの方法です。かかりつけの普通のお医者さんで大丈夫。一度相談してみましょう。
いずれは収まってくる症状とはいえ、辛いならあえて我慢する必要はありません。
一か月たっても症状が軽減していない場合は・・・・
事件や事故から一か月たっても症状が軽していかない場合、この場合は医療の専門家による治療が必要になることがあります。各都道府県の健康保険センターや保健所に問い合わせてみてください。
事件や事故に遭遇する前から、日々の業務で疲労を蓄積していたり、以前にも同様の事件を経験している場合、なかなか症状が改善してこない場合があります。
あなたの家の近くの医療施設を紹介してくれることと思います。ぜひ活用してみてください。
カウンセラーの利用もお薦めです
怖い、恐ろしい体験の辛さは人に語ることで癒していくことができます。
どんなに怖い、恐ろしい出来事であっても、その時経験した出来事を思い切って語ってしまうと、思っていた以上に気持ちが軽くなったりするものなのです。
事件や事故のあとは「自分に事故の責任があったのではないか」とか「もっと自分がうまく対処していれば、事故にあった人を救えたのではないか」といった「罪の意識」に苦しむことがよくあります。
「なかったこと」にして誰にも話すことなく胸のうちにしまっておくと、罪悪感は実際のもの以上に増幅してしまうことがあります。増幅してしまった罪悪感はあなたから「生きていく自信」を奪い去ってしまいます。
しかし、事故で体験したことを順を追って話てみると「事実の整理」がすすみ、「あの場合、ああいうふうに行動したのは無理がなかったのだ」とか「自分は事故現場で適切な行動をしていたのだ」という事実に気づくこともできるのです。
どんなパニック状況であっても人は案外と適切な対処をしているものです。
当相談室ではカウンセラーが事件や事故にあったときの体験をお話しを伺いながら振り返っていきます。体験を振り返るなかで、自責感や不安が減少していきます。
カウンセラーはプロの聞き手です。秘密は厳守します。また、決してあなたのことを責めたり、批判したりはしません
現在出てきている心身の症状について説明し、対処の方法について考えていきます。
フラッシュバックがあったり、眠れなかったり、また逆に感情が麻痺してしまったり・・・心身の症状の辛さはやはりしんどいものです。
そうした辛い症状をどうやって緩和していくかをお伝え致します。
ご希望される方にはリクラゼーションの方法もお伝えしていきます。
時間はかかりますが、今の苦しみは必ず落ち着いてきます。
今の時期の苦しい気持ちを少しでも和らげることができるように、カウンセラーもお手伝いしていきます。
ぜひご利用になってください。
こころの相談室 りんどう 担当カウンセラー 馬場健一
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参考文献 対人関係療法でなおすトラウマ・PTSD 水島広子 創元社