自死遺族の方へのカウンセリング

 

このページでは自死遺族の方、家族や同僚を自死により亡くされた方を対象に、少しでも今の苦しみが緩和されるよう、いくつかのヒントを述べていきます。

 

ヒントは

 

のマークに書き込んでいきますので、もしもよろしければ参考にしてください。

 

大切な方が自死によって亡くなられた場合、通常の死別体験以上の非常に大きな感情の波(悲しみや不安、罪の意識など)があります。こうした感情の波は非常に苦しものですし、遺された方の気力や体力をあっと言う間に消耗させてしまうことがあります。

 

カウンセラーの利用を強くお薦め致します。

 

 

遺された方が感じる様々な感情

 

よく見られる苦しい気持について解説していきます

 

「誰にも話すことがことのできない」という孤独感

 

自死の場合は「タブー視」される風潮が強く、ご自身の辛さや悲しみを打ち明けることができないことがあります

 

「悲しみを語ること」や「辛さを語ること」を遠慮してしまったり、自粛してしまったりすることがあるのです。

 

「辛さを語ることができない」というのは非常に苦しい状態です。しかし、自死遺族の方の中には辛さを語ることをためらってしまう方もおられます

 

「遺された子供たちのために、弱音を吐かずに頑張らなければいけない。」「生活のこともあるし、ポジティブに前を向いて歩いていかなければならない」

 

こういった理由から、決して周囲に弱みを見せず頑張ってしまう方もおられます。

 

その気持ちは正当なものです。

 

でも、時には周囲の人に助けを求めてみましょう。

 

辛い時、悲しい時には周囲の方に悩みを打ち明けたり、お世話になったりしてもいいのだと思います。

 

また、周囲の人々の慰めや励ましでかえって辛い気持になってしまうこともありますね。

 

・「まだ子どもがいるのだから、あなたがしっかりしなければ」

 

・「済んだことは仕方がない。前をむいて進んでいかなければならない」

 

・「いつまでくよくよしているの?早く元気をだしなさい」

 

悪気のない励ましでも、この時期は大きな傷つきのになってしまうのです。

 

また理不尽な言葉を投げかける人もいるものです。

 

・「どうして気づいてあげられなかったの?」

 

・「何か家族の問題があったんじゃないの?」

 

このように配慮のない言葉に傷つけられてしまう事もありますし、またこうした問いは遺された方の「罪の意識」を大きくしてしまいます。

 

 

 

自分を責めてしまう罪の意識

 

・「どうして気づいてあげられなかったんだろう?」

 

・「何か、私の言動に問題があったのだろうか?」

 

・「もしかしたら、あの一言に原因があるのではないだろうか?」

 

 

例をあげます。(架空の事例です)

 

うつ病で治療中の夫をもつA子さん。ご主人は仕事を休み悲観的なことばかり言っていて、しかも仕事も家事も育児も一人でやらなくてはならなくなり、疲労とストレスは限界に達していた。

 

その日は子どもがぐずって仕事にも遅れそうだった。

 

そんなときご主人に「君は元気そうでいいよね」と言われてしまう。

 

A子さんはイライラして「あなたがそんなだから、私は元気なふりをしてがんばっているんじゃない。もう限界よ」と言い返してしまう。

 

その日ご主人は自ら命を絶ってしまった。

 

(水島広子 「臨床家のための対人関係療法入門ガイド」 創元社より引用)

 

人がたったひとつの理由で亡くなることは、まずありません。

 

「あのときの自分の一言」で誰かが亡くなることはまずない話なのです。

 

自死に至るには、複数の「めぐりあせの悪い出来事」と「偶発的なタイミングの悪さ」が複数重なってしまうことが多く、誰か一人の個人の責任により人が亡くなることはまずありえないのです。

 

・たまたま、その時体調が悪かった。

 

・そのとき、たまたま周囲の人がいなかった。

 

・そのとき、たまたまその人の機嫌を損ねることが起こった。

 

「めぐり合わせの悪い出来事」はひとつであれば、人はなんとか対応し、乗り越えていけるものです。

 

偶発的な「めぐりあわせの悪い出来事」が複数重なってしまうと、「乗り越えるのが困難な壁」になってしまい、それは人の力では防ぎようのない出来事になってしまうことがあるのです。
また、いわゆる「自死の兆候」は実は非常にわかりにくもので、経験豊富な医師やカウンセラーでもわからないものです。

 

誰だって、身近な方が亡くなるなんてことは考えないものですし、また、亡くなる方は努めて元気そうにふるまうものです。

 

「死にたい気持ち」に悩む方はその苦しみをあえて隠そうとするものなのです。

 

 

「原因がわからないこと」についての怖さ

 

自死で亡くなられた場合、遺された方々が「怖さ」を感じることがあります。

 

 

・「なぜ、亡くなったのだろう?」

 

・「どうして亡くなったのだろう?」

 

 

原因を探し求めても、なかなかわかりません。いや、わからないことが普通なのです。

 

「原因がわからないこと」はとても怖い事です。

 

しかし「怖さを感じること」は亡くなった方に対して「申し訳なさ」を感じることがあります。

 

「亡くなられたことに怖さを感じることで罪の意識を持ってしまうことがあるのです。

 

さらに「原因がわからないこと」でどうしても自分に責任を求める形で「亡くなられた理由」を解釈してしまいがちです。

 

 

・「あの時の自分のひとことが原因ではないか?」

 

・「自分がもっと○○してあげていれば・・・」

 

・「自分が○年前に○○をやらなければこんなことにはならなかった・・・」

 

「罪の意識」はとても重く、ずっとまとわりついている感じがするものです。

 

気分転換をしようとリラックスした状態でさえも、ふいに頭をもたげてくることがあります。

 

 

亡くなられた方への「怒り」

 

亡くなられた方に怒りを感じる方もおられます。

 

・「なぜ、自分や子供たちを置いて逝ってしまったんだろう」

 

・「困っていたのなら相談してくれれば良かったのに」

 

・「なぜ、何も言ってはくれなかったのだろう」

 

・「自分は見捨てられたのではないか?」

 

 

亡くなられた方に対して怒りを感じたり、亡くなられた方のことをつい批判してしまうのですが、問題はそうした怒りを感じてしまう自分に罪の意識を感じてしまうことです。

 

「自分を置いて逝ってしまったことに対する怒り」と「亡くなった方のことに怒りを感じてしまうことの罪の意識」

 

この相反する二つの感情の葛藤が、遺族の方や遺された方を苦しめます

 

 

人はお互いに矛盾する感情を同時にもつもものです。

 

それがむしろ普通なのです。

 

悲しみの感情と同時に「怒りの感情」をもってしまったとしても、それが倫理的に矛盾しているということでは決してありません。

 

 

将来の生活に対しての不安

 

「遺された子供たちの教育費はどうしよう?」

 

「借金があるのだが、どこに相談すればいいのだろう?」

 

他にも、様々なことでこれからの生活に不安があるでしょう。

 

このページの最後のところに付録として公的な支援機関をまとめてありますので参考にしてください。

 

 

この時期に現れる心身の不調

 

自死遺族のの方の場合、「眠れない」、「食べられない」「イライラする」心身の不調が強烈に出てくることがあります。

 

こうした反応は事故や災害など大きなショック体験をした方によく見られる反応で、決してあなたが壊れてしまったり、ダメになってしまったりということではありません。

 

これらの症状は時間の経過とともに落ち着いてきます。

 

以上の点を踏まえた上で下からの解説をお読みください。

 

ここでは特によく見られる症状について触れていきます。

 

ここに書かれている心身の症状がすべてわけではありません。
今現在症状がないのであれば、これから症状が出てくるというわけではありませんのでご心配なく。

 

よく見られる心身の不調

 

・眠れない

 

・イライラする  怒りっぽくなる

 

・悪夢を見る

 

・食欲がない

 

・疲れやすい  体がだるい

 

・集中力が落ちる ぼんやりしてしまう。

 

・仕事中のミスが続く

 

・悲しくない 何も感じない

 

「何も感じない」「悲しくない」と、「自分が冷たいのではないか」とか「自分がおかしくなったのではないか」と不安になったり、自分を責めてしまったりする方もおられます。

 

人は大きな衝撃を受けると、体内の防衛本能があなたを守ろうとして感情を麻痺させることがあります。感情を麻痺させなければ、あまりの衝撃のためにあなたが押し潰されてしまうからです。

 

決して「あなたが冷たい」というわけではありません。

 

災害のあとや交通事故のあとなど、ショックな出来事のあとに多くの人にみられる心身の自然な反応です。

 

フラッシュバック。

 

亡くなられた方の第一発見者で、ご遺体の顔を見てしまったり、亡くなられた現場の光景を目撃してしまったりした場合、ご遺体の様子や亡くなられた現場の光景が不意によみがえり、急に思い出したりしてしまうことがあります。

 

亡くなられた現場に行けない。

 

亡くなられた方が会社などで亡くなられた場合、発見された部屋や場所にどうしても行くことができないことがあります。危険なことなど何もないことは理性では理解しているのですが、どうしても足がすくんで「亡くなられた現場に行けないのです」

 

このほかにも、こんな例があります

 

・狭い場所が恐い

 

・暗い場所が恐い

 

・風呂場など水回りが恐い

 

 

記念日反応(アニバーサリーリアクション)

 

亡くなった方の命日や誕生日、結婚記念日、もしくは亡くなられた時間などが近づくと、気持の落ち込みや体調の不良など、亡くなった直後のような反応や変化がでることがあります。

 

 

心身の不調からの回復について

 

こうした心身の異変は「生きていくことへの自信」を大きく傷つけてしまいます。

 

・「自分はもうダメになってしまったのではないか?」

 

・「自分が壊れてしまったのではないか?」

 

・「自分は立ち直れないのではないか」

 

こうした不安や無力感に苦しんでしまう方もおられます。

 

繰り返しになりますが、こうした心身の不調はいわゆる事故や事件などの惨事を経験したときに普遍的に見られる反応です。

 

どれだけメンタルが強い人でも、強烈なショック体験を受けると、様々な心身の不調に見舞われれしまいます。

 

「あなただけが弱い」とか「あなたが壊れてしまった」というわけではないのです。

 

 

こうした症状は期間限定のものであり時間の経過とともに軽減されてきます。

 

理由は事件・事故後のトラウマ症状のページに詳しく触れていますのでよろしければ参考にしてください

 

しかし一か月以上長く続く場合は医療機関の受診をお薦めします。また不眠などの症状が辛いときにも医療機関に相談してもよいでしょう

 

 

回復に向けて〜心身を休める

 

この文章をお読みになられている方の中には、今が非常に辛い時期にいる方もいるかもしれません。

 

今は無理に元気になろうとしたり、ポジティブになろうとしたりするのではなく、できうる限り休養をとり心身を休めてください

 

死別の辛さからの回復のプロセスは死別の悲しみ 辛い症状 悲嘆ケアのページを参照してください。

なかなか元気になれないご自身のことを責めてしまう方もおられますが、回復のペースは個人ごとに大きく異なります。

 

すぐに元気になれないからと言って、「自分がダメになった」ということではありません。

 

例えば夫を亡くした妻からみると、「息子はもう悲しくないのだろうか?冷たくはないか」、息子から見ると「お母さんはいつまで悲しんでいるのだろう。残された家族は大事じゃないんだろうか」と言う具合に家族同士の中でもお互いの思いが理解されずに、辛い思いをすることがあります。

 

回復のペースは本当にひとそれぞれに違いますので、どちらがいい、悪いという問題ではないのです。

 

この時期は知らず知らずのうちに疲労が溜まりやすい時期です。

 

どうしてもやらなければならないことは仕方ないと思いますが、「先のばしにできそうなこと」や「キャンセルしてもよさそうなこと」、「人に頼めそうなこと」はできるだけやらないようにして、心と体をできるだけ休めるようにしましょう。

 

「眠れない」など身体の不調が長く続く時は、医療機関を利用してもよいでしょう。

 

誘眠剤を処方してもらうのもひとつの方法です。

 

 

 

回復に向けて〜体験と感情を語る 表現する

 

「安心な場所で今の辛さを言葉にして表現し、誰かに受け止めてもらうこと」は大きな心の癒しにつながります。

 

どんなに強い辛い感情も、口から出して人に伝えることで必ず弱まっていくものです。実際に言葉にして語ることで順化が進み、緩和されるからです。

 

どんな辛い体験をしたのかという体験を語ることも意義のあることです。

 

体験を語ることで、「自分が悪かったのではないか」という罪の意識を緩和していくことができます。

 

 

例をあげます(架空の事例です)

 

職場の友人が自殺してしまったB子さんの例

 

金曜の晩、B子さんは友人から「来週は出てこないから、きょうで終り」と笑って挨拶された。

 

冗談とは思っていたが、その週末、友人は自ら命を絶ってしまった。

 

「自分に打ち明けてくれたのに、気づかなかった。最後の助けを求められていたのに何もできなかった」

 

B子さんはその思いを誰にも伝えることができず、苦しくて、苦しくて眠れない日々が続き、日に日に消耗していった。

 

B子さんが苦しんでいたのはそれだけではなかった。

 

「自分は悪いことをしているのに、黙っている。周囲の人がそれを言ったらどう言うだろう」

 

「悪い事をして黙っている私はうそつきだ」

 

そう思い悩んだB子さんは職場に出られなくなってしまった。

 

B子さんはあるとき、カウンセラーを訪ね、「誰にも言わないでくれますか?」と恐る恐る話はじめた。

 

ひととおり話しが終わったところで、彼女はとうとうこらえきれなくなり、泣き崩れてしまった。

 

辛い自責感が「それを黙っていることの自責」によって肥大していたのだが、カウンセラーに話すことによって、とりあえず「黙っていることの自責」からは解放されたのだ。

 

 

また体験を語ることは「黙っていることの自責感を軽くするだけではありません。

 

体験を語ることで自分の気づかなかった事実に気づくこともあるのです。

 

再度、例をあげます(架空の事例です)

 

先ほど例のB子さんの事例では新しい事実があらたにわかった。

 

実は亡くなった友人はB子さん以外の複数の人に「月曜日は来ない」「もう嫌になった」「来週はいません」と自死をほのめかしていた。

 

職場のメンバー全員に声かけをしていたのだ。職場のメンバーは全員がB子さんと同じように自分を責めていた。

 

この職場のメンバー全員のカウンセリングをしていたカウンセラーがそのことをB子さんに説明すると、B子さんは足をがくがく震わせながら、「よかった、私だけじゃなかったんですね」と泣き崩れた。

 

勇気を出して体験を語った結果、新しい事実を知らされ、「自分が原因」という罪悪感から解放されたのだった。

 

下園壮太 「平常心を鍛える」 講談社α文庫より引用

 

家族の方や友人で信頼できるかたにいろいろな思いを語ってみましょう。

 

また日記などに思いのかけを書き連ねていくという方法もあります。

 

 

 

ぜひカウンセリングを

 

大切な方を自死亡くされた方には、信頼できるカウンセラーに相談することをお薦め致します。

 

自死の遺族の方の場合、ご自身の辛い気持ちや心身の辛い症状を人に話せないケースが多く、「罪の意識」や「心身の不調に対する不安」が時間が経過しても解消されずに残ってしまうケースが多いからです。

 

「自責感」や「不安」は語られることなく心の中にため込んでしまうと、大きくふくらんでしまうことがあります。

 

秘密は厳守します。

 

よろしければ、当相談室にご相談ください。

 

こころの相談室  りんどう  担当カウンセラー 馬場健一

 

カウンセラープロフィール

 

 

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