ペットロス
なかなか理解されない悲しさ、苦しさ
犬やネコ、小鳥やハムスターを家族同様に可愛がっている方も多いと思います。
ところで寿命だったり、事故などでペットを亡くしてしまい、その悲しみからなかなか立ち直れない方もいると思います。
ペットロスは実は家族や友人を亡くすのに匹敵するくらいの衝撃を人にあたえることがあるのです。
次の事例をご覧ください
事例1〜飼い猫の事故死死
OLのA子さんはネコと二人暮らし。
ネコの『たま』は公園で捨てられているものを連れ帰ってきて、育て上げたものだった。嬉しいときも悲しいときも、『たま』と一緒。就職のため一人暮らしが決まったのだが、どうしても離れられずに『たま」を実家から連れてきたのだった。
ある日、『たま』が死んだ。車に轢かれたのだ。
その日、A子さんが家に帰った時、『たま』がいない。家の中を探してみると、いつも閉めているはずの窓が空いている。朝出かけるとき、うっかり閉め忘れてしまったのだと思うがここから出て行ったのだろうか?胸騒ぎがして外に探しに行く。すると自宅アパートのすぐ裏の道で車に轢かれた『たま』の変わり果てた姿があった。何かに押しつぶされて、ぎゅうっと地面にねじこまれたような衝撃が走った。
『たま』はペット霊園に埋葬されることになった。実家から来てくれた母が「残念だったね。また新しい猫を飼えばいいよね」と慰めてくれる。悪気がないのはわかっている。でもそんな言いぐさもないと思う。『たま』の代わりなんて存在しないんだ。
葬儀の晩は眠れなかった。
「そもそも自分が窓を閉め忘れなければ、『たま』が外に出ていくことなんてなかった」
「実家から連れて来たりしなければ、今頃実家で元気にすごしていたかもしれない」
「悲しみ」やら「自分に対する怒り」やらでその晩は一睡もできなかった。
青ざめた顔をして会社に行く。仕事をしてもケアレスミスばかり・・・
ついイライラして同僚にも当たり散らしてしまう。
そのときふいに、予告もなく、轢かれた『たま』の姿が目にうかんだ。一瞬、自分が『たま』の事故現場にまい戻ったような気がしたのだ。
その晩もどうしても眠れない。疲れ切っているはずなのに。自分はこれからどうなるのだろう。
複数の事例を組み合わせた架空の事例です。
震災や事故を経験した人たちの中には、不眠はフラッシュバックに来るしむ方たちがいます。ペットを失った場合もその体験が大きな衝撃となり、心身に異変をきたすことがあります。
犬やネコの交通事故などによる突然死の場合、凄惨な事故現場を目撃することにより、ショック症状を起こすことがあるのです。
多くの場合、フラッシュバックや不眠などの症状は時間の経過とともに落ち着いてきますのでご心配なく。
ただし、一か月たっても症状が落ち着かない時には思い切って、医師などの専門家の力を借りるようにしてください。
もちろん、ペットを失った方で、今現在症状が出ていない方は、ご安心ください。今症状が出ていないのであれば、これから先、症状がでてくることはありません。
詳しくは別項の「事件・事故後のトラウマ症状」を参照にしてください。
この稿では不幸にして心身の不調に見舞われてしまったり、ペットの死に際し、「自分を責める気持ち」が非常に強く苦しんでいる方を対象に筆を進めていきます。
なかなか理解されない悲しさ、苦しさ
しかしながら、亡くした対象が動物であると、心身の不調の苦しさや喪失の悲しみをなかなか周囲は理解してくれません。
「たかがペットなのだから、もういい加減に元気をだしたら?」とか「また新しいものを飼えばいいじゃない」とか・・・・
周囲の人は善意で言ってくれているのだけれど、心に刺さってくる言葉ってありますよね。
そう、「辛いのだけれど、それを周囲が分かってくれない、理解してくれない」という部分が実はペットロスの辛い部分だと思います。
「罪の意識」は何か大切なものを失ったとき、必ずと言っていいほど意識に上ってきて、遺された人を苦しめます。
そして罪の意識は語られることなく胸のうちにため込んでいくと、肥大化してしまうことがあります。
ペットロスの場合、「辛い気持ち」や「罪悪感」が語られることが少ないがためにやっかいなのです。
以前、ペットのヘビを亡くして、うつ状態になった女性の話を聞いたことがあります。
ヘビであれ、ハムスターであれ、文鳥であれ、それが飼い主にとって大切なものであれば、その悲しみは尊重されなければなりません。
悲しみを認めること、そしてお弔いをすること
まず、ペットを喪って悲しいと思う気持ちを正当なものとして認めてあげましょう。
「こんなことくらいで落ち込むのはおかしい」なんて思うことはありませんし、「早く元気にならなければ」と無理をすることはありません。
(だってペットはあなたにとって大切な家族じゃないですか)
悲しいと思う気持ちを誰かに話して受け止めてもらってください。日記を書いて気持ちを書きとめてみるのもよいでしょう。
犬やネコの交通事故などによる突然死の場合、凄惨な事故現場を目撃することにより、ショック症状を起こすことがあります。
多くの場合、症状は時間の経過とともに落ち着いてきますのでご心配なく。
ただし、一か月たっても症状が落ち着かない時には思い切って、医師などの専門家の力を借りるようにしてください。
詳しくは別項の「事件・事故後のトラウマ症状」を参照にしてください。
そして、お弔いの日を作って、その日は亡きペットを偲んであげましょう。
これは高額な動物霊園に埋葬したりとか、豪華なお葬式をするように、ということではなく、あなたオリジナルのお弔いの日を作ってみるのです。
いつも一緒に散歩していた道を歩きながら思いを巡らせてみたり、好物だった餌をお墓にお供えしてみたり・・・
人間にも初七日、四十九日、一周忌などの「喪」がありますよね。
その日だけは亡きペットのことを思い、偲んでみましょう。
こころの相談室 りんどう 担当カウンセラー 馬場健一
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